印鑑 in フラワーバスケット

一般的に女性は結婚すれば姓が変わる。 もちろん、共に生きていくパートナーにめぐり会えることは大変幸せなことだと思うけれど、その一方で、生まれて以来慣れ親しんだ自分の「姓」は手放すことになる。 今の時代「●●の家に入る」とまでは大げさすぎるとしても、やはりある日突然他人の姓を名乗ることになり、署名、捺印など、死ぬまで夫の姓を使い続けることになるのだ。 それは女性にとってどれほど大きな決断か、不安を抱えているか、その気持ちに気付いてくれる男性はごくわずかなような気がする。 しかし以前、その女性の気持ちをとてもデリケートに感じ取っている男性がいた。 結婚披露宴の中でのサプライズとして、新婦に印鑑をプレゼントしたいというのだ。 「自分の姓を名乗ってくれることへの感謝と喜びを、ちゃんと伝えたい」といい、フラワーバスケットの中にオリジナルの印鑑をそっと添えてプレゼントする、という演出を考えていた男性がいた。 当日のその演出のシーン、新郎は緊張しながらも自分の気持ちを自分の言葉で伝え、フラワーバスケットを差し出した。 彼女は号泣。 そして、お花の中にそっと添えられた印鑑を取り出し、両手で抱きしめていた。 恐らく彼女にとってその印鑑は、結婚指輪以上の価値を感じるものになったに違いない。 自分の大きな決断は、彼にとっても大きな決断であることをしっかり理解し、そしていろんな書類に捺印するたびに、彼の思いを感じることができるのだから。 一つの印鑑に託された思いは、今頃素敵な夫婦を作り上げていることと信じている。